松田 恵示 特任教授
(スポーツ文化論、スポーツ教育論)

教員紹介インタビュー

2023/07/18

教員

研究内容

私が研究していることは、大きく4つに分けられます。1つ目は、「遊び」の文化社会学的な研究です。2つ目は、スポーツ教育と体育科教育に関する研究です。3つ目は、全般的な教育支援や教育協働に関する社会学的な研究です。4つ目は、企業や行政等と行う教育イノベーションに関する研究です。

(左)交叉する身体と遊び-あいまいさの文化社会学-、(右)おもちゃと遊びのリアル-「おもちゃ王国」の現象学-

「遊び」の文化社会学的研究では、通常はあまり研究の対象にはならないことが多い「遊び」について、社会的文化的事象の一つとして分析したり(漫画・アニメ、ドラマ、映画、高校野球、ワールドカップ、メディアスポーツ、Eスポーツ、会話、地域スポーツ、不登校、テーマパークなど)、その概念や思想、哲学についても、大真面目にでも遊びの精神を大切にして研究しています。現象学という哲学のアプローチを主眼とした「遊び」の原理的な研究や、「遊び」を通して人間や社会を知ろうとする研究などがその例です。

(左)「遊び」から考える体育の学習指導、(中)子どもが喜ぶ!体育授業レシピ—運動の面白さにドキドキ・ワクワクする授業づくり、(右)新版体育科教育学の現在

次に、スポーツ教育と体育科教育に関する研究では、「遊び」の観点から、現在のスポーツ教育や体育科教育を批判的に検討しています。理論と実践の両面からの、その思想や社会との関係、カリキュラムや学習指導のあり方(幼小中高特支)、教員養成や研修のあり方、さらには教育支援センターやフリースクールなどいわゆる一条校以外の学校とスポーツや体育の現状の把握と課題の分析などがその例です。

(左)教育支援とチームアプローチ‐社会と協働する学校とこども支援‐、(右)子どもの貧困とチームアプローチ-「見えない」「見えにくい」を乗り越えるために-

教育支援や教育協働についての社会学的な研究では、「チーム学校」や「社会に開かれた教育課程」という言葉に見られるように、近年の学校教育では学校・家庭・地域の連携・協働により社会総がかりで、子どもの学びを支えることが強く目指されていますが、このような社会変化に伴う教育の制度的な転換について、理論と実践の両面からそのあり方について研究しています。教育における「チームアプローチ」についてや、教育支援人材の捉え方や育成のあり方、さらには「教育支援協働学」の成り立ちなどについての研究などがその例です。

(左)Disney KIDEA GUIDE BOOK、(右)「AI時代の教育への5つの提言」

企業や行政等と教育イノベーションに関する研究では、変化する社会の中で、学術的な観点からだけではない実践的な取り組みを通して、イノベーションにつながる社会的実践を創り出し、もう一度、学術的な研究に戻ることを試みています。企業であるディズニーやバンダイと協働して全く新しい積み木文化を創造したり、吉本興業と連携して「笑楽校」という取り組みを進めたり、人工知能(AI)時代における教育の新しい姿について各ジャンルの企業と連携して実践的に取り組む試みなどがその例です。また、国や都、区市町村の子どもや教育(遊び)をめぐる取り組みを考える政策的な現場にもこれまで多く参画してきました。
まとめてみると、教育と文化をめぐって、「遊び」「身体」「体育/スポーツ」「技術革新」「学校」「子ども」などをキーワードにしながら、文化社会学的アプローチを共通項に、よりきめ細かく人間や社会を理解したり、新しいアイデアを創り出したり、それを社会の中で実践的に形にしてみたり、論文や著作物にまとめて自由に多くの人と対話することなどを行なっているということになります。

(表紙写真掲載の著作例)
  • 松田恵示、交叉する身体と遊び-あいまいさの文化社会学-、世界思想社、2001
  • 松田恵示、おもちゃと遊びのリアル-「おもちゃ王国」の現象学-、世界思想社、2003
  • 松田恵示、「遊び」から考える体育の学習指導、創文企画、2016
  • 松田恵示・鈴木聡、眞砂野裕編、子どもが喜ぶ!体育授業レシピ—運動の面白さにドキドキ・ワクワクする授業づくり、教育出版、2019
  • 岡出美則・友添秀則・松田恵示・近藤智靖編、新版体育科教育学の現在、創文企画、2015
  • 松田恵示・大澤克美・加瀬進編、教育支援とチームアプローチ‐社会と協働する学校とこども支援‐、書肆クラルテ、2016
  • 松田恵示監修、子どもの貧困とチームアプローチ-「見えない」「見えにくい」を乗り越えるために-、書肆クラルテ、2020
  • 松田恵示、Disney KIDEA GUIDE BOOK、KADOKAWA、2016
  • 松田恵示、「AI時代の教育への5つの提言」、教育と医学 1月号、教育と医学の会編、2018


(代表的な論文例)
  • 松田恵示、「子どものスポーツ」とは一体何か?--スポーツにおける新しい公共を考えるために、スポーツ社会学研究 第19巻2号、日本スポーツ社会学会編、5-18頁、2011
  • 松田恵示、「津波ごっこ」とはいったい何か、子ども社会学研究第19巻、日本子ども社会学会編、35〜45頁、2013
  • 松田恵示ほか、ネットワーク化の進む学校教育における「チームアプローチ」概念が持つインプリケーション、日本教育大学協会研究年報第35集、日本教育大学協会編195〜203頁、2017
  • 松田恵示、タブレットの普及は学校体育に何をもたらすのか:「情報様式」と身体の政治性の観点から、年報体育社会学第2巻、日本体育学会体育社会学専門領域編、43-57頁、2020

研究指導

先に紹介した研究に関連する内容に関心や興味がある人ならば、ご一緒になって、研究することの面白さや、考えたり調べたりすることの自由さを味わうことができればと思っています。2023年度から本研究科には新たに加わりました。またこれまでには、別なところでも、学部、大学院修士課程(博士前期)、博士課程(博士後期)での研究指導を20数年行なってきました。

受験生へのメッセージ

見通しの立ちにくい現在の社会は、逆に言えば、いろんなことにチャレンジできる可能性に拓かれた社会でもあると思いたいです。大学院もそうしたチャレンジの一つだと思います。すでに人生のイメージは、直線的なものではなくなっていて、進んだり退いたり社会に出ても一つ同じ場所にずっーと止まっていることは、おそらくあまり好まれない社会になっていくのではないかと思います。スポーツ、ウエルネス、遊びなどは、そんな社会において、「人生を面白く生きる」ことに関わる、とてもクールなジャンルだと思います。また、時代を写す「鏡」にもなる領域だとも思います。スポーツウエルネスに引き寄せて研究することや、調べること、考えることの可能性は、だからこそ無限大ではないかと感じています。みなさんとご一緒に、人間や社会に向けて、スポーツウエルネスという場所から、耳を澄ませてみることができることを楽しみにしています。


※2023年インタビュー当時の情報です。

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