学部長メッセージ・創設の理念スポーツウエルネス学部

学部長メッセージ

多様な価値観のなかでの学び

スポーツウエルネス学部 学部長 沼澤 秀雄

 「ウエルネス」の発祥はジョージ・ウィリアムズが創設したイギリスのYoung Men’s Christian Association (YMCA:キリスト教青年会)に遡ります。その活動がアメリカに広がりスプリングフィールド大学において「精神」「知性」「身体」を示すロゴが作られました。この3つが調和したバランスの取れた成長を願って書かれた『High Level Wellness』の著書から「ウエルネス」の考え方が広がっていきました。このようにスポーツウエルネス学部はキリスト教に関わりのある「ウエルネス」を冠に掲げてスタートしています。この学部の教育理念は「すべての人の生きる歓びのために」としました。スポーツを基盤とした人間の生き方を視野に入れたいと考えたためです。そこにはスポーツパフォーマンス向上への取り組み、心身についてのポジティブな働きかけ、人と自然環境の共生を目指した持続可能な社会を追求する取り組みが含まれています。

 スポーツウエルネス学部は、観客のいない東京オリンピック・パラリンピックと新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経験して、コミュニケーションの大切さと命の尊さを認識しました。その上で皆さんには環境・スポーツ教育、ウエルネススポーツ、アスリートパフォーマンスの3つの領域からカリキュラムを用意しています。こどもたちが自然の中で楽しく安全に遊べるようにするために必要なことは何か、日常生活の質を上げるためにはどうすれば良いのか、人間の可能性を高めるために実施しなければならないことは何かについて探究してください。

 新座キャンパスには観光学部、コミュニティ福祉学部、現代心理学部そしてスポーツウエルネス学部の4つの学部があります。それぞれ特徴のある学問を学ぶ学生が5000人以上在籍しています。また、学部生の中にも日本を代表するアスリートやスポーツを支援する立場から学ぼうとする学生がいます。学際的な開かれた学問である「スポーツ」と「ウエルネス」について仲間と積極的に交流することで学びを深めてください。私たち教職員一同は皆さんの学びを全力でサポートしていきます。

創設の理念

立教大学を創設した「聖公会」と「スポーツ」は深い関係にあります。聖公会は、16世紀の英国宗教改革によって生まれた英国国教会を母体とするが、国教会体制を堅持する目的で、1617年に英国王ジェームス1世が公布したのが『スポーツの書』(The Book of Sports)でした。この時に奨励されたのは、アーチェリーや跳躍競技、モリス・ダンスなどでした。その後、さまざまなスポーツ競技が英国において誕生し、近代スポーツのほとんどが英国起源である背景には、このような歴史があります。

1828年に、英国の歴史あるパブリックスクール、ラグビー校の校長として着任した、聖公会の司祭であり、神学博士でもあった、トマス・アーノルドは、カリキュラムを大胆に改革し、学生の知力のみならず、全人的な人格教育を徹底的に行いました。アーノルドがその教育改革の基軸として着目したのが、キリスト教教育と共に「スポーツ」であり、とりわけ「フットボール」でした。これが「ラグビー」「サッカー」の起源でもあります。スポーツが人格教育に重要な意義を有することを訴え続けたアーノルドに、強い影響を受けたのがピエール・ド・クーベルタンであり、彼はアーノルドの精神を基礎として、スポーツマンシップ、フェアプレーの重視、人間形成と教育に貢献するスポーツの振興を願って、近代オリンピックを興していくのです。

このように本来、「スポーツ」とは、「人間性を回復」(レ・クリエーション)し、人格を養い、信頼と愛によって結ばれた共同社会を形成し、心身の健康を増進し、自然と共感するための「人間教育の文化」でした。私たち立教大学は、その学則第1章第1条において、「本大学は、キリスト教に基づく人格の陶冶を旨とする」と定めています。その意味で、立教大学に、「スポーツウエルネス学部」が新設されることは、本学の建学の理念に照らしても、大いに意義あることです。

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