すべての人に開かれたスポーツ文化を創造する
松尾 哲矢 教授
2022/08/01
教員
OVERVIEW
現代社会が抱えるさまざまな課題を抽出し、豊かな人間性を基盤とし、高度なウエルネス社会の構築に寄与するスポーツウエルネス学。3つの専門領域を柱とし、どのような学びや研究が進められているかをご紹介します。専門研究例としてウエルネススポーツ領域について松尾 哲矢 教授にお話を伺いました。
皆さんは、バーンアウト(燃え尽き症候群)という言葉を知っていますか。専心的な競技者が、その競技に燃え尽きてしまうことで起こる心身の疲弊状態、否定的感情等を伴う症候群です。その要因について大学生競技者を対象に調査しました。その結果、生真面目な性格、勝利至上主義、常に競技成績を求められる競技環境、競技仲間や指導者との人間関係など、心理的な要因だけでなく、スポーツ文化、集団や組織、制度など社会学的な問題があることがわかりました。そこで競技者のスポーツ文化を調べるために、競技者の育つ「場」に着目し、世界で活躍している水泳、体操競技、テニスなど、その多くの競技者が育っている「民間スポーツクラブ育ち」と「学校運動部育ち」の競技者が身に付けている文化や競技環境等について調査しました。クラブ育ちの競技者で「楽しむこと」により重点を置いていることがわかりました。楽しみを中心として競技力を高める方法や競技志向ではない多様なスポーツの楽しみ方を広げていくにはどうしたらよいのでしょうか。
スポーツの歴史を紐解くと、「50年で広がり50年で定着する」とみることができます。日本では、1911年に誕生した大日本体育協会(現在の(公財)日本スポーツ協会)を中心に50年で広がり、50年で定着してきましたが、それは男性、若者、競技志向という特徴をもっていました。それから遅れること50年、1960年に第1回パラリンピック大会(ローマ)が開催されたあたりから、しょうがい者のみならず、子ども、高齢者、女性等、それまでどちらかといえば周辺に置かれてきた皆さんのスポーツの必要性が認識され、50年をかけて広がってきました。しかしながら、定着にはいたっておらず、この50年かけてすべての人が楽しめるスポーツ文化を定着させる必要があります。
次の50年は、誰もが自分らしくスポーツを楽しみ、生きる歓びを享受するためのウエルネススポーツ文化を生活文化として定着させる時代です。その担い手としてウエルネススポーツの理論と実践法を探究し、ともに新たな時代を築いていきましょう。
スポーツの歴史を紐解くと、「50年で広がり50年で定着する」とみることができます。日本では、1911年に誕生した大日本体育協会(現在の(公財)日本スポーツ協会)を中心に50年で広がり、50年で定着してきましたが、それは男性、若者、競技志向という特徴をもっていました。それから遅れること50年、1960年に第1回パラリンピック大会(ローマ)が開催されたあたりから、しょうがい者のみならず、子ども、高齢者、女性等、それまでどちらかといえば周辺に置かれてきた皆さんのスポーツの必要性が認識され、50年をかけて広がってきました。しかしながら、定着にはいたっておらず、この50年かけてすべての人が楽しめるスポーツ文化を定着させる必要があります。
次の50年は、誰もが自分らしくスポーツを楽しみ、生きる歓びを享受するためのウエルネススポーツ文化を生活文化として定着させる時代です。その担い手としてウエルネススポーツの理論と実践法を探究し、ともに新たな時代を築いていきましょう。
※本記事は「スポーツウエルネス学部 学部案内2023」をもとに再構成したものです。
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
プロフィール
PROFILE
松尾 哲矢 教授
九州大学大学院博士後期課程人間環境学府行動システム専攻修了。博士(教育学)。戦後日本のスポーツ界における「場」の構造変動と文化的再生産等を研究課題とする。東京都スポーツ振興審議会会長、(公財)日本スポーツ協会指導者育成委員会副委員長、(公財)日本レクリエーション協会理事などを務める。
松尾 哲矢(研究者情報)