奇二 正彦 准教授
(環境教育・野外教育)

教員紹介インタビュー

2023/07/18

教員

研究内容

現在、私の研究テーマは大きく分けて2つあります。
1つ目のテーマは、自然体験と、人の生きがい感や畏敬の念、スピリチュアリティとの関係です。私は文学部出身なのですが、自然と関わる仕事がしたく、紆余曲折を経て環境コンサルの研究員と、環境教育のNPOスタッフになることができました。そしてその仕事にとても生きがいを感じる日々を送っていました。30代後半になった頃、過去の自然体験が自分の価値観や信念を醸成したことについて深く考えるようになりました。恩師に相談すると、そのような実存的な問いに関することは、スピリチュアリティに関係しており、国連やWHOをはじめ、学術的に広く研究されていることを教えてもらいました。そこで40歳の時、大学院に進学しました。研究手法としては、国定公園などの大自然における自然体験の前後で心理学的な検討を行ったり、すでにスピリチュアルなメッセージを発している著名人にインタビューをして、過去の自然体験とその概念研究などを行ってきました。また、自然体験の多寡を測定する尺度の作成なども行ってきました。今後は、自然体験が生理学的にどのような影響を与えるのかに関する研究にも取り組んでいきたいと思っています。

2つ目のテーマは、サステナブル社会と環境教育の関係です。気候変動や生物多様性の損失など、環境問題はますます深刻化しています。その解決のためには、イノベーションや政治的な働きかけなど、様々な方法が考えられます。一方、システム思考のフレームの1つである「氷山モデル」を使って考えると、目に見える環境破壊の根っこにはそれを生み出す社会システムがあり、その社会システムは人間の欲求や価値観、スピリチュアリティなどを元に作られていることが見えてきます。私は、人間の欲求や価値観、スピリチュアリティなどに働きかけ、変革する方法として、環境教育は重要な基盤を成すと考えています。そこで、国際的な視点から環境教育を比較分析したり、国連のミレニアム生態系評価において、スピリチュアリティと環境保全がどのように関係しているのかを研究したり、効果的な環境教育の手法などを開発しています。これらの研究を通じて、社会全体が環境問題に向き合い、サステナブルな未来へ一歩を踏み出すための新たな知見を獲得することを目指しています。

研究指導

授業では、スピリチュアリティに関する概念研究や、その扱われ方の歴史、そして自然体験や、医療・看護の領域でどのように扱われてきたのかについて学びます。また、環境問題や自然保護の歴史、環境思想などを学びます。また、実際に実験をする場合は、心理尺度を使った検討や、生理学的な検討を行います。

受験生へのメッセージ

現代社会はVUCA時代と言われています。VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)という概念の頭文字を取った造語です。簡単に言えば、これから社会がどうなるのか、予測がとても難しい時代ということです。そんな時代だからこそ、自分の内に耳を澄ませてみてください。自分の中に湧き起こる好奇心、疑問、憤り、感動、畏敬の念などは唯一無二のものです。そんな個人的なことが研究動機となっても、専門知識を深め、新たな視野が開かれてゆくと、実は時代と深く繋がっていることに気づきます。



※2023年インタビュー当時の情報です。

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