スポーツは選手だけのもの?勝つためだけのもの?

ライトナー・カトリン・ユミコ准教授

2024/06/20

教員

好きなスポーツの世界大会がテレピで放送されると皆さんもチェックするのではないでしょうか。観客席を見ると、日本の選手が出ている試合では日本の観客や応援団がたくさんいて盛り上がっているのに対して、日本が敗退したとたんテレビ放送すらなくなり、世界大会への注目が薄くなっていくということを不思議に感じたことはありませんか?これをヨーロッパの状況と比較してみると、仮に自国の選手が敗退し他国の選手同士が競技をしていても、特にドイツ語圏ではテレビでも試合が放送されることもあり、観客は他国の選手を応援し、スポーツそのものを楽しんだりする人も多いというのは過言ではありません。

これは、「スポーツは選手のもの、勝つためのもの」と考える傾向が強いという日本と、「スポーツは皆のもの、まずは楽しむもの」と考えるドイツ語圏の違いが出ているのかもしれません。

私が現在取り組んでいるのは、ドイツ語圏を中心としたヨーロッパ諸国と日本のスポーツ文化やスポーツ環境、スポーツ制度および組織のあり方を比較する研究です。例えば、学校スポーツや大学スポーツを基盤としている日本と違って、ドイツ語圏では、地域スポーツクラプがスポーツ制度の基盤となっており、すべての人がいつでもどこでも自分の好きなように運動やスポーツを楽しむことができる環境が整備されています。ドイツでは、ドイツ人の3分の1が活動している約9万の地域スポーツクラプがあり、スポーツが地域コミュニティに根付いており、生活の一部となっていることが分かります。

日本とドイツ、どちらが良いか悪いかという比較ではありません。比較することではじめてそれぞれの特徴や強みに気づき、また、互いに改善すべき点、今後必要な要素が見えてきます。日本のスポーツ制度は、多くのアスリートにとって恵まれた環境であり素睛らしいのですが、スポーツには競技以上に多様な価値が多くあります。日本社会にとってより充実したスポーツ環境の構築、こどもから成人までより多くの人がスポーツを当たり前に楽しめる環境づくりこそ、これから目指す姿かもしれません。

プロフィール

PROFILE

Katrin Jumiko LEITNER 准教授

[専門分野]スポーツマネジメント
[keyword]#アスリートのキャリア形成 #スポーツ制度・組織の国際比較 #セカンドキャリア

約10年間オーストリア女子柔道の強化・代表選手。ウィーン大学大学院東アジア研究科日本学博士課程修了。博士 (Japanology)。2013年より、立教大学コミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科助教。2018年9月、現職。

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